第3回:【ターゲット論】ペルソナを超えた「コミュニティ」の理解 -「SNSを、単なる『流行』から『最強の営業資産』へ。」SNSマーケティング連載(全8回)-

2026年、多くの企業がSNS運用に苦戦しています。「投稿しても売れない」「フォロワー数しか見ていない」
——その原因は、SNSを「点(テクニック)」で捉えているからです。

本連載(全8回)では、企業様の支援実績を持つプロの視点から、Instagramを中核に据え、事業を成長させるための「戦略・制作・解析・仕組み」を一本の線に繋げた「再現性のある教科書」をお届けします。

全8ステップで、あなたのアカウントを「顧客に選ばれ続ける資産」へと変えるロードマップを解説します。

今回の第3回では、『ターゲット』について深掘りします

〜顧客心理とSIPSモデル〜

1. はじめに:なぜ「30代・女性」というターゲット設定は失敗するのか?

SNS運用の相談を受ける際、最も多く返ってくるターゲット設定が「30代女性、都内在住、既婚」といった、いわゆる属性データ(デモグラフィックス)による区分けです。

しかし、これまでのマーケティングの経験から断言できるのは、SNSにおいて属性だけでターゲットを絞る時代は終わったということです。

想像してみてください。
同じ「30代・既婚・都内在住」の女性であっても、一人は「キャリアアップのために夜な夜な英語学習の情報を探している人」であり、もう一人は「子どもの偏食に悩み、10分でできる時短レシピを切望している人」かもしれません。

この二人に同じ投稿を届けても、どちらかの心には響き、どちらかはスルーします。SNSのタイムラインは、ユーザーにとって「自分に関係があるかないか」が0.1秒で判断されるシビアな場所です。

これからのSNSマーケティングに必要なのは、面(属性)ではなく点(状況・心理)で捉える視点です。

2. SNS時代の心理モデル「SIPS(シップス)」の活用

マスメディア時代の購買行動モデル「AIDMA」や、ネット検索時代の「AISAS」に代わり、SNS時代のユーザー心理を解き明かす鍵となるのが、電通が提唱した「SIPS」というモデルです。


S(Sympathize):共感 
SNSのすべての入り口は「共感」です。
情報の正しさよりも先に、「あ、これ私のことだ」「素敵だな」という感情の揺さぶりがなければ、指は止まりません。
企業が語る「スペック」よりも、ユーザーの「不平不満」への寄り添いが入り口になります。

I(Identify):確認・自分事化
共感したあと、ユーザーは「これは自分にとって本当に価値があるか?」「この発信者は信頼できるか?」を確認します。
過去の投稿を遡り、プロフィールを確認するフェーズです。ここで専門性や一貫性が問われます。

P(Participate):参加

SNSにおける「参加」とは、購買だけを指しません。
「いいね」「保存」「コメント」「ストーリーズでのシェア」といった、軽いアクションすべてが含まれます。
この小さな参加を積み重ねることで、ブランドとの心理的距離を縮めます。

S(Share & Spread):共有・拡散
参加した体験が満足度の高いものであれば、ユーザーはそれを自らのフォロワーへ共有します。
これが新たな「共感(S)」を生み、ULSSASサイクルへと繋がっていくのです。

企業が犯しがちなミスは、最初の「S(共感)」を飛ばして、いきなり「P(参加=購入)」を迫ることです。

SNSは「市場」である前に「社交の場」であることを忘れてはいけません。

3. 「ペルソナ」から「インサイト」への昇華

ターゲットを深く理解するために「ペルソナ(詳細な架空の人物像)」を作成することは重要ですが、多くの企業はプロフィールの作成で満足してしまいます。

本当に必要なのは、その人物の「インサイト(無意識の欲求)」を言語化することです。

インサイトとは、ユーザー自身も気づいていない、あるいは言葉にしていない本音です。

例えば、「最新の美容家電」を欲しがっているユーザーがいるとします。

  • ニーズ: 髪を綺麗に乾かしたい。

  • インサイト: 忙しい朝の準備を1分でも短縮して、心に余裕を持って出社したい。あるいは、夫に「いつまでも綺麗だね」と言われたい。

このインサイトに焦点を当てることで、投稿のキャッチコピーは変わります。

「最新機能搭載!」ではなく、「朝の5分に余裕を生む、魔法のドライヤー」と伝える。

これが「刺さる」投稿の正体です。

ターゲットの「不満・不便・不安(3不)」を書き出し、その裏にある願望を掘り起こす作業に、コラムの執筆と同等の時間を割くべきです。

4. アルゴリズムが判別する「コミュニティ(関心クラスタ)」

2026年現在、各SNSのアルゴリズムは「誰が誰をフォローしているか」よりも「この投稿はどの関心クラスタ(コミュニティ)に向けたものか」を重視しています。

Instagramの「発見タブ」やTikTokの「レコメンド」は、ユーザーの過去の閲覧履歴から、その人がどの「村(コミュニティ)」の住人であるかを判定しています。

「キャンプ好きの村」「起業志望者の村」「ミニマリストの村」。

企業アカウントが成長するためには、自らがどの「村」に向けて発信しているかをアルゴリズムに教え込む必要があります。

そのためには、発信内容のジャンルを絞り、そのコミュニティ特有の「文脈」や「キーワード」を使いこなすことが不可欠です。

アルゴリズムに「ジャンルの認定」をされることで、届けたいコミュニティへ投稿が届くようになります。

そのためには、コラムのはじめに書いた「ターゲットの状況と心理」を定めて、「投稿の一貫性を保つこと」がとても重要です。

あちこちの村にいい顔をする八方美人のアカウントは、結果として誰にも届かない「透明な存在」になってしまいます。

5. ターゲットを動かす「心理的トリガー」の使い分け

ターゲットの心理を理解した上で、アクションを促すための「心理学的トリガー」を効果的に配置しましょう。

  1. 返報性の原理:
    「ここまで無料で教えてくれるの?」というレベルの有益情報を先に提供することで、ユーザーの中に「いつかこの企業から買いたい」という心理的負債(良い意味での)を作ります。
  2. 社会的証明:
    「保存数1万超え」「導入企業1,000社突破」といった数字や、他人の評価を提示することで、自分一人では決断できないユーザーの背中を押します。
  3. 権威性:
    「SNSマーケター歴5年」「創業100年の老舗」といった肩書きは、情報の信憑性を一瞬で担保します。

6. ユーザーとの「対話」からターゲットを再定義する

最後に、机の上で決めたターゲット設定は、運用開始後に必ず見直してください。

SNSの最大の利点は、反応がダイレクトに返ってくることです。

  • 「思わぬ層からコメントがつく」
  • 「想定外の投稿が保存されている」
  • 「投稿の反応が思わしくない」

これらはすべて、ユーザーからの「私たちの悩みはここだよ」というサインです。

日常の投稿の分析に加えて、ストーリーズのアンケート機能やDMを活用し、常にターゲット像をアップデート(ピボット)し続ける忍耐力が大切です。

7. まとめ:SNSは「鏡」である

SNSマーケティングにおいて、ターゲットとは「追いかけるもの」ではなく、あなたの発信によって「引き寄せられるもの」です。

「安さ」ばかりを強調すれば、価格にしか興味のない層が集まります。

「想い」や「こだわり」を丁寧に語れば、その価値を理解してくれるファンが集まります。

ターゲット論とは、究極的には「自社がどんなお客様と付き合いたいか」を定義することと同義なのです。

次回は、これらのターゲットが滞留している場所――Instagram、TikTok、Xなど、各媒体の特性をどう活かしてメディアミックスを行うか。2026年の最適解を解説します。